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キャラクター名等わざと消してない事があります。不都合があれば遠慮なくご一報ください (C)2005KOEI Co., Ltd. All rights reserved
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鯨に捧ぐ 
 2007/05/16 Wed 17:18:11  E d i t
2007y05m16d_184416906.jpg


アラビア海。

一隻の戦列艦が東に向かっていた。

艦は左舷後方からの安定した風を受け、右にヒールしつつ快速を保っていた。

ボス・ホエールは、メインマストを見上げた。
メイントップスルが大きく風をはらんで美しいカーブを描いている。

策具は美しいロープワークで固定され、船員達の熟練の程が伺えた。

艦尾へと流れていく波が泡立ち、快適な航行をしている事を示していた。

「本日モ快晴ナリ・・・と。」

ボス・ホエールはのんびりと満足そうにつぶやいた。






西の水平線にわずかに薄く雲が見えた。

遠い西の海上で嵐が発生し、追いかけてきている兆しである。

今のうちに嵐への準備をしておくべきだ、と考えているところに副官が来た。

「提督、西に嵐が発生しています。」

「うむ。追いつかれそうか。」

「深夜の一点鐘の頃かと。
 それまでにアラビア海を抜けられれば良いのですが。」

「抜けられると思うか?」

「五分五分です。」

さっき午後の3点鐘が鳴った。
夜までにそれほど時間は無い。
明るいうちに準備しておくに越した事はなかろう。

「急いで艤装を荒天用に。」

「アイ。」

副官はきびきびと船員達に指示を出し、水兵たちが慌しく動きはじめた。


(嵐のシーンから、ラストまで一気にいきます。長文です。ご用心)



2007y05m16d_184241375.jpg




まるで約束でもしていたかのように、副官が予想した時間ぴったりに嵐は来た。

ダブルアンカーを打ち込んでいるにも関わらず、艦は嵐に翻弄されている。



ボス・ホエールはこの嵐の中でも堂々と甲板に立っていた。

思ったほど強い嵐ではなかった。

しかし、前方にはラッカディブ諸島がある。

錨索が切れたら、流されて座礁する危険がある。

普段は美しい島々が、今は闇の中で地獄への入り口を開けて待っているのだ。




慣れない少年水兵が、メインステイにしがみついている。

「このイワシ野郎!ヒンズーの神様の生け贄にされっぞ!下に降りとけ!!」

ボス・ホエールは一喝し、少年は嵐の中でよろけながら下層甲板に降りていった。






轟々と唸る風の中でボス・ホエールは懐かしい声を聞いた。

(・・・でかくなったな、鯨)

誰の声だ?

しかし次々と襲ってくる波と風は、嵐の中の提督に考えている暇は与えなかった。




予想外に嵐は速く通り過ぎた。

明るい朝日の中で見ると、驚いた事にラッカディブ諸島がすぐ目の前だった。

ボス・ホエールはこの状況で座礁を避けられた幸運を感謝した。



艦の上は波と風にかき回されて散々な有様だったが、被害はさほどでも無いようだった。

甲板は副官によって被害状況が調べられ、各所で修復に取り掛かっていた。



ボス・ホエールは考えていた。

嵐の中で確かに聞こえた、聞き覚えのある、懐かしい声。

思い出せそうなのに、思い出せない。

考え込むときに眉間に皺が寄るのがボス・ホエールの癖だ。





そんな提督の癖を知っている副官が、やや遠慮しながら話し掛けた。

「提督、ちょっとよろしいか」

はっと我に返り

「ああ。すまぬ。考え事をしていた。」

「船底に亀裂が見つかりました。」

「ふむ。報告を続けろ。」

「予備の水樽などを置いているところで、すでに応急処置は施しました。
カリカットまでの航行には問題はありませんが、
今回の嵐を含め、各所の損傷なども考えると工廠での修理が必要です。」


思えば、この艦には無数の戦闘を課してきた。

世界最強を目指す者達とのしのぎを削る戦いを繰り返し、
その度に修理はしていたが、塗装はあちこちはがれ、
それが軍人ボス・ホエールの戦列艦としての凄みを醸し出してもいるが、
そろそろ彼女も化粧直しせねばなるまい。




2007y05m16d_184309750.jpg




「他に異常はないか」

副官はちょっとためらい

「新米の少年水兵が、その・・・なにやら提督に会いたいと言うのですが、
提督はお忙しいと言って怒っても、きかんのです」

「あの嵐の時のイワシ野郎か」

ボス・ホエールは、あの時の少年のビビっている様を思い出して笑い

「よかろう。嵐で生き延びたイワシを連れて来い。」

「アイ。」

副官は後ろを振り向き

「イワシ出て来い!」

と言った。




そういうとマストの陰に隠れていたのであろう、

痩せた少年水兵がギクシャクと出てきて、しゃちほこばって提督に敬礼した。

「サー、感謝します!これを差し上げます」



差し出す小さな細い手は潮と作業で荒れ、擦り傷だらけだった。

幼いながらも、一生懸命一人前の水兵になろうと頑張ってるのだ。

最強を目指すこの艦では、水兵へ課せられる技術水準も高い。

ついてくるのは並大抵ではなかろう。



そんな小さな手のひらに乗せられていたのは、小さなマリア像だった。

「オイラの母さんが出航するときくれたです。

 ・・・嵐の間、提督のためにこれ握って祈ってましたです!」

そして思い出して「サー!」と付け加えた。

瞳はまっすぐに提督を見詰め、畏怖と尊敬で輝いていた。

「尊敬する提督に持っていてもらいたいです、サー!」

「そうか。しかし貴様のようなイワシ水兵から一方的に物をもらうと
提督の沽券に関わるのだ。」

少年水兵はあからさまにがっかりした表情になった。



その予想通りの表情を見てボス・ホエールは笑いを噛み殺しながら

「だが、交換と言う事なら受けてもよかろう。」

とわざと必要以上の威厳を込めて言った。

「イワシは字が読めるか?」

「・・・名前しか書けません・・・サー・・・」

少年は真っ赤になって言った。

「なら、読み書きできるようになる事だ。これは提督からの命令だ。」

少年は背中に棒でも突っ込まれてるんじゃないかというほどに背筋を伸ばし、

「アイ!」

と答えた。



ボス・ホエールは提督服のポケットから古い本を取り出した。

彼が幼い頃、船乗りになる事を目指すきっかけになった
少年向きの簡易な小説だった。

そして夢みた少年は船乗りになり、軍人になる事を決め、
最強を目指していた時も片時も離さなかった小さな本。

少年の手のひらのマリア像を受け取り、
ポンっと本をそこに置いた。

少年はその本を壊れ物のようにそっと手のひらで包みこむと胸に抱きしめ、

「一生の宝です、サー!」

と感激で涙目になりながら言った。

「いい交換ができたな」

ボス・ホエールは笑顔で言うと、本の入っていたポケットにマリア像を入れた。






2007y05m16d_185941312.jpg




カリカットに着いた。

さっそく艦は揚艇され、工廠での修理に入った。



各種書類などの手続きを終えたボス・ホエールはカリカットの広場のベンチにいた。

久しぶりの陸である。




(鯨が陸にあがったのか)





また声がした。今度ははっきりと思い出せる。

「グッさんか!」

突然の独り言にしては声が大きすぎた。

周囲の人が振り返る。


ボス・ホエールにとって忘れられない古い仲間、S・グッドスピード。

共に「最強」を目指そうと最初に誓った仲間。

あれから姿を見る事もないが、どうしているのかと気にかかっていた。



それで声が聞こえたのか?

幻聴かもしれない。

だが、旧友の声なら幻聴でもうれしいじゃないか。


そういえば、この場所で互いの夢を語り合った事もある。

あの頃、一緒にカリカットにたむろしていた仲間はどこに行ったんだ。





そして・・・



俺は・・・



どこに行きたいんだ?




まあいい。どうせ艦は修理中だ。

しばらく陸にいるのも悪くは無い。




また声がした。


(ボスが陸にあがったら捕鯨できねえな)



「待ってろ。また海に出るさ」



ボス・ホエールは笑った。


カリカットの空は晴れていた。


(完)
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テーマ:大航海時代Online - ジャンル:オンラインゲーム

コメント
この記事へのコメント
アボーン
2007/05/16 Wed 21:15:45
URL | melon #-[ 編集 ]
アボーン(´・ェ・`)
2007/05/16 Wed 23:21:46
URL | ジャジー #ac0Ame5g[ 編集 ]
このかっこよさありえねwww
でもボスのにおいを残しつつの高クオリチーの文。
これはまじで感動したwうまいわwジャジー。
少年との対話の部分は涙出そうだったようぇw
ボスに会いたいなー(´・д・`)
2007/05/17 Thu 17:50:08
URL | 祝融夫人 #RgXwh5vg[ 編集 ]
ジャジさんの文才sugeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeeNA!
2007/05/17 Thu 18:00:04
URL | ノイラント #OARS9n6I[ 編集 ]
きゅんってなった!!! 文才スゲー!

ボスにあいてえなあ
2007/05/17 Thu 19:50:45
URL | カート #bxvF113M[ 編集 ]
っかっけええええええええええwwwwwwwww
文才すげーーー分けてくれよ!!!!
2007/05/17 Thu 23:05:09
URL | merry #-[ 編集 ]
何このオレ風に見せといて俺じゃない中身wwwww
ジャジの愛を感じたぜ!
てかあれ、グッさんとかマジで背中追っかけてた人だから、少しウルウルしたぜベイベー!
そして俺もみんなに会いたいぜー!
IN時間的にどうにもならんけども・・・・w
またいつの日か!
★☆。.:*:・"゜★βyёヾ(⌒∇⌒)ノβyё★。.:*:・"☆★
2007/05/18 Fri 04:51:46
URL | ボス #-[ 編集 ]
>祝さん
ほめてくれてありがとおお!!!
最初の構想だと、少年水兵は嵐の中で怒られるだけ
のチョイ役のつもりだったんだよね。
大航海時代の提督が、
あんな少年水兵に直接会うなんて考えられんけども、
会うだけで提督の類まれな懐の深さを表現しようと
思って書き始めたら妙に楽しくなってきて、
いつのまにかメインシーンみたいになってしまったー。

>ノイさん
おほーー照れるうううううう(*ノノ)
文才というより、これも妄想スキルのひとつに間違いはない、と思う!

>カートさん
ボスが長期休止はめっささみしい。
あーだこーだと思い出語りはじめるとキモくなるから、
ボス主人公のお話にしてみた!
きゅんってなってくれて嬉しいよー!!!

>メリ
お話のボスは、かっこいい要素増幅しまくりだお!
いつかメリを主人公にした冒険者のお話も書きたいんだお!
地味に暇な時に構想練ってるんだお!!

>ボス
よっしゃ、ボスが読んでくれたら書いた甲斐があった!!
ボスがブログに休止宣言した後、早く書き上げたかったんだけど、
1週間くらい構想練ってて遅くなっちまったああ。
「ボスとであったのはベイでどーたら、あんなことがあってどーたら」
とか、うちが書き出すと、ボスに
「ジャジ キモイwww」と言われるからなwww
実は何個かいろんなパターンのストーリー考えたんだけど、
グッドさんだけは必ず登場させるつもりだったんよな。
ボスが読んでウルウルしたなら大成功じゃ(・ω・)b
2007/05/18 Fri 15:09:14
URL | ジャジー #ac0Ame5g[ 編集 ]
じゃじちゃん すごいです
すいこまれるように読んでしまった
涙でた
2007/05/18 Fri 19:03:03
URL | うずまき #-[ 編集 ]
うずまきちゃん、長い文だったのに、読んでくれてありがとねえ~。
こうやってフレに読んでもらって感想もらえると、
書いてよかったあと思えてうれしいです。
(*'▽'*)
2007/05/19 Sat 06:54:06
URL | ジャジー #ac0Ame5g[ 編集 ]
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